活用事例

飲食店A社 (正社員360名、パートを含めると1000名)の事例

1.主たる業務

120店舗の飲食店を運営している。
2011年の東日本大震災で、会社も従業員も大きな被害を受けたことから、労働安全コンサルタントに職場の安全の診断・指導を依頼したもの。
2012年7月、コンサルタントは、毎月1回訪問指導をすることとなった。

2.安全衛生管理上の問題点

これまでの議事録等を詳細に読み、「問題点は何か?」を次の4点にまとめた。

  1. (1)安全衛生管理体制
      1. 製造部、2. 物流部、3. 事務部門、4. 店舗120店 に大別される。
      安衛方針、安衛ポスター、標語もなく、体制は構築されていなかった。
  2. (2)社内帳票「事故報告書」による労働災害の報告から
      スライサーの刃にはさまった野菜を取り除く際、停止の確認が不十分であったため指を負傷した事例。
      安衛則第108条「刃部の掃除等の場合運転停止」を知らなかった。
  3. (3)毎日発行される社内報による労働災害の報告から
      1. 段差で転倒、2. 包丁が滑り人さし指切傷、3. 雪で滑って転倒 など。
      対策が「作業に集中し不注意をなくす」「あわてないで冷静に」など。
      安衛法を基本とした研さん不足を感じた。
  4. (4)安全衛生委員会の議事録から
      1. パトロールの結果記録がない
      2. 産業医不参加/衛生管理者の週1回巡視も省略
      3. 食品加工の作業マニュアルで安衛法関係がない など。
      「研修センター」は、接客マナー、食品衛生などが中心。

3.問題点の改善計画

  1. (1)製造部パトロール結果の改善計画
      1. 「機械は故障するもの」「人的ミスはあるもの」を念頭にヒヤリハットを抽出し、
       リスクアセスメントに展開すること。
      2. カゴ台車使用は、「安全長靴」に統一し、定期の「靴底点検」も実施すること。
      3. 階段の片側手すりはリスクの放置。「トップの現場確認」が必要なこと。
      4. ボイラー取扱責任者、はい作業主任者の正副の選任をすること、など
  2. (2)物流部パトロール結果の改善計画
      1. フォークリフト作業で運転技能講習修了証の原本携帯をすること。
      2. ヘルメットの着用は良いが「あごひも」がゆるい。お互い注意すること。
      3. 非常用シャッターの下にモノが置いてある。
      4. フォークリフト作業の安全対策が今後の課題である。
  3. (3)店舗パトロール結果の点検項目作成
      以下の項目のチェックリストが作成され、現在これに基づく点検が励行されている。
      1. 整理、整頓:不要なものが放置は?床面の凹凸がなく歩行がスムースか?
      2. 清潔、清掃:決められた服装点検は?清掃用具の破損、損傷などの状況は?
      3. 厨房内機器の故障、修理、点検、補修作業:時間帯ごとの責任者は誰か?異常時の連絡先は?
      4. トイレ、休憩室、更衣室:衛生面は?ごみ、飲食物の処理は救急箱・消火器は?

4.改善の効果

2016年10月の安全衛生委員会開催時点での改善効果です。

  1. 1. パトロール結果報告では、写真も添付され「いい点」「改善を望む点」に識別され、安全意識の高揚が感じられた。
  2. 2. 厨房に「通ります 言わなきゃあなたは気づかない」の標語が掲示された。社員からの標語で、なかなかの名言である。
      積極的な参加が伺える。
  3. 3. 構内停車中の物流部トラックの「輪止め」は、停車中の6台全車両で実施。守るべきことがきちんと守られている。

5.全国産業安全衛生大会で発表

これまでの取組について、2016年10月に仙台で開催された中央労働災害防止協会主催の「全国産業安全衛生大会」で、「大震災における『食品工場・飲食店舗』で働く人の安全と健康管理」と題し、A社の製造担当部長が発表をしています。